誕生日の宣戦布告

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胸がいっぱいで、涙を滲ませながら振り返るようにして部長と目を合わせる。 優しい目に心臓が締め付けられた瞬間にはもう唇が重なっていた。 ありがとうも言えず、 でも伝えたくて、 部長の唇を何度も包み込んだ。 やっとで唇を離して、もう一度ケーキに目を向ける。 ろうそくが少し短くなっていた。 涙を溜めた私の目には、ろうそくの炎は幾重にも重なり、キラキラと光るオレンジ色の宝石のように見えた。 前のめりになりながら、後ろから回されている部長の腕をギュッと掴み、私はその灯りを惜しむようにそっと吹き消した。
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