誕生日の宣戦布告

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原田社長を社長室にお連れすると、それを迎えた戸田社長も少しだけいつもと違う雰囲気を持っているような気がした。 そして、それを私には気付かれないようにしているようだった。 コーヒーをお出しする間も、二人はいつもより静かに、まるで私が出て行くのを待っているように感じた。 そんな二人の様子が気になりながらも、今度は急いで事務所に戻る。 今日中にやらなきゃならないことは山ほどある。 一時間ほどして、社長室からの内線。 『私だ。来てくれるかな?』 「はい。すぐに伺います。」 原田社長が帰られえるんだ。 社長室のドアをノックし、社長の返事を受けてドアを開けると、そこにいたのは戸田社長だけだった。 原田社長の姿がない。 「…あの、原田社長は?」 「今日はもう帰られたよ。」 「…あ、お見送りは…。」 「今日はいいんだ。室井君、少し座りなさい。」 「…はい。」 私は今までいた原田社長と戸田社長のコーヒーカップをテーブルの隅に寄せた。 二人ともコーヒーに手を付けていないようだった。 変な予感が私の胸を締め付けた。
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