急な訪問者

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そう言うと、部長は胸から手を下ろし、背中からゆっくり抱き締めてくれた。 「それを言われたらしょうがないな。」 私はそのままの体勢で、近くに置いてあった小さな紙袋を手繰り寄せる。 「何かな?」 わくわくしながら包みを開ける。 最初に出てきたのは綺麗なガラスのキャンドルグラス。 「可愛いー!秀一さん見てください!」 部長にそれを手渡した後、もう一度紙袋を見ると、もう一つ小さな包みがある。 「あ、もしかしてキャンドルもかな?」 と、包みを開けて思わず言葉を失う。 「ゆい。どうした?」 とっさにそれを部長から隠す。 「なんだ?見せてみろ。」 「あ、ち、ちょっと、秀一さん!」 小さなそれはもぎ取られるように部長の手に移った。 「なんだ?キャンドルか?………ふーん。」 …ヤバい。 …部長の顔が怖いです。 それは紛れもなく、キャンドル。 なんだけど、 小さなパッケージには "彼に抱かれたい甘い夜に" "彼女に抱いてと言わせたい熱い夜に" という謳(ウタ)い文句が並んでいた。
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