守りたいもの

37/39
前へ
/39ページ
次へ
残業時間。 経理部。 カチャカチャカチャカチャ…。 必死でキーボード叩いてます。 今日は本当に忙しかった。 どこに移動するにも小走りで、慣れないヒールの高さにも疲れてしまった。 けど、支払いのデータをなんとかしなくちゃ。 7時半に琴ちゃんが帰る前、みんなの分のコーヒーを入れてくれた。 「ゆい先輩、今日は大変でしたね。でも、食堂での姿とかカッコよかったです!!今日でまた、ファン増えましたよ!!」 「え、そうなの!?」 池口さんが身を乗り出した。 「女子ですよ。女子。ゆい先輩、女子の憧れですから。」 「そ、そっか。」 そして、池口さんはコーヒーに口を付けた。 「琴ちゃんもありがとう。私がいない間に、すごく進めておいてくれたんだね。おかげでもうすぐ仕上がりそう。訂正するところもほとんどなかったしね。」 「う、嬉しいです。わからないとこは池口さんや部長に聞いたりしたんですけど。」 私が池口さんにも笑顔を向けると、池口さんがなぜか少し照れていた気がした。 そして、部長にも目を向けると、優しい表情で少しだけ頷いてくれた気がした。 助け合える仲間。 信頼できる上司。 やっぱ、私、ここが好きだな。 私は今日の自分の言葉を、 今更ながら実感していた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2299人が本棚に入れています
本棚に追加