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「…誕生日の日。
ゆいの…あの男に僕の方がゆいのことをよく知ってるって言ったんだ。
…でも…あの男、顔色一つ変えなかった。それどころか、ゆいのことを知るのは自分だけ。って自信たっぷりの顔してた。
…悔しかった。
ゆいのことは僕が一番知ってると思ってた。
小さい頃、卵アレルギーだったゆいの食事は、すっごく注意が必要だった。だけど、小学校になる頃には食べられるようになって、中学校になったら生卵も食べられるようになった。
二人で食べたトロトロのオムライス、ゆいがはしゃいでたのを今でも覚えてる。
小さい頃は熱も出しやすかった。中学では皆勤賞だったけどね。
可愛くて、勉強も出来たけど、運動はダメだった。
…よく知ってるだろ?
でも…子供の頃のゆいだけ。
僕は大人になったゆいを知らない。
だから…知りたくなったんだ。大人になったゆいを。」
ヨウちゃんは私を立って抱きしめたまま、私の耳元に語りかけるように話した。
そして、腕の力を緩め、ヨウちゃんの中で私の体の向きを変えた。
向き合う私にヨウちゃんが言った。
「手を繋いで一緒に笑い合ってたあの頃に…戻れないのかな。
10年経って、大人になっても。
もちろん、僕だって他の女性とも付き合ってきた。
だけど…ゆいの実家で10年ぶりにゆいに会った時、どこかに隠してきた気持ちが溢れてきたんだ。
やっぱり、ゆいがいい。って。
だから、ゆい。
僕にゆいをちょうだい。」
その言葉が終わらないうちに、ヨウちゃんが私をベッドに倒した。
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