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涙がとめどなく溢れていた。
「…泣かないで、ゆい。」
ヨウちゃんの声は消え入りそうだった。
男の人は泣けない分、余計に辛いはずだ。
そう思うのに、私は涙を止められなかった。
ヨウちゃんは私の上から下りて、ベッドの脇に落ちていたタオルケットを拾い上げた。
そして、私の体をゆっくり起こしてそれを纏わせた。
「ごめん。ゆい。もう…泣かないで。…体さえ繋がれば、ゆいの全部が手に入ると思ったんだ。ゆいがこんなに大人っぽくなったから、欲しくなっただけ。ゆいの体が欲しかっただけなんだ。」
…嘘ばっかり…。
「俺ってサイテー。ごめん。ゆい。忘れてね。俺、帰るね。ちゃんと戸締りするんだよ。」
サイテーなんかじゃない。
最低なんかじゃないよ。
そう言いたかったのに、
ヨウちゃんを呼び止められなかった。
玄関でドアが静かに閉まる音がした。
私たちの関係が…
…終わる音だった。
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