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ゆいのアパートに着いた時には10時半近くになっていた。
…長居はできないか。
それでも、ゆいの顔が見たかった。
駐車場に車を停めて、アパートに向かう時、勢いよく階段を下りる音が聞こえた。
目を向けた先には一人の男。
…!?
…あれは、"ヨウちゃん"か!?
心臓が跳ね始める。
足は掛け出していた。
しかし…。
あの男の顔は…。
階段を駆け上がり、インターホンより先にドアノブに手を掛けた。
何の抵抗もなく開いたドアに滑り込み、投げ出すように靴を脱いだ。
リビングに入ってもゆいがいない。
息が苦しい。
恐る恐る寝室を覗いた。
ベッドで泣きながらうずくまるゆいの姿。
タオルケットに包まっているが、白い脚がそのままのぞいていた。
俺が来たことにも気付かないのか、そのまま泣き続けるゆいの横に腰を下ろして呼びかけた。
「…ゆい…。…一体何があったんだ…。」
ゆいは、その声に驚きながらもすぐに腕を伸ばして俺にしがみついた。
抱き寄せたゆいの体は小さく震え、
髪は汗と涙で濡れていた。
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