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ベッドのシーツに付けられた、涙のシミが俺の心を締め付けた。
ゆいはしばらく俺の中で嗚咽を上げて泣いていた。
部屋の中が熱くてたまらない。
締め切られたサッシが俺の気持ちをさらに重くした。
少し落ち着いたゆいを離して、たまらずエアコンを付けた。
そして再びゆいの側に座ると、ゆいはすぐに腕を伸ばして俺を引き寄せた。
あの男に、
ゆいのこの姿。
状況はすぐにわかったが、今回ばかりは嫉妬という感情は湧いてこなかった。
…二人の間には何もなかった。
俺は確信していた。
恐らくゆいは、
自分と俺のために必死で自分を守ったんだろう。
ベッドの上は乱れていない。
ゆいが力づくで何かをされたとは思えない。
…ただ、ゆいの立場だ。
ゆいにとってアイツは大切な幼馴染だ。
俺との関係を守るために、
長年築いてきたあの二人の関係が壊れたかもしれない。
ゆいの涙はその涙に違いなかった。
そして、あの男も。
階段を下りるアイツの顔は
確かに泣いていた。
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