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手帳を見下ろしながら、なぜか心がざわつく。
この手帳は、どこかで彼女に結び付くから。
そう。
彼女が経理室に一人でいた時、彼女と一緒に私の目に映り込んだこの手帳。
普段なら何も気にならないこの手帳。
恋人とはいえ、自分以外の人のものを勝手に覗くのは許されない。
なのに、私はその手帳に手を伸ばした。
正確に言うと、その手帳からはみ出していたメモらしき紙に手を伸ばした。
そのメモは、黒い手帳から少しだけはみ出して、その存在を誇張するかのように見えた。
見てほしい。
見てはいけない。
両方の声が聞こえていた。
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