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その言葉に彼女の目の奥が揺れ、体は小さく身震いしたまま固まった。
俺と関係を持ったと思えば、
彼女は自らアイツから離れるんじゃないかと
彼女の性格を
利用した。
揺れた瞳から大粒の涙がこぼれる。
けれど、
彼女は俺の思惑通りには動かない。
「…嘘。…そんなの絶対…嘘。」
俺の下になりながらも、俺から目を逸らさずに、震えた声ではっきりと言った。
「…何も…覚えてないだけですよ…。思い出せないなら…思い出させてあげますよ。」
俺は再び彼女にキスをしようと迫ると、彼女は両手で俺を制した。
肩を抑えて、はっきりと彼女の意思で俺を拒絶した。
「…思い出す…って…、何もないんだから…もう、こんなこと止めて。お願い…。」
「…覚えてないのに、何もなかったなんて…どうして言えるんですか?」
「…覚えてなくたって…わかります。…私のカラダは…好きな人以外とは…繋がらない。」
…え。
…なんだよ…それ。
…1%も可能性がないと言った彼女の姿と重なった。
「…倒れたところを助けてもらってありがとうございました。…帰りますね。」
彼女は涙を拭いて俺を押し退け、立ち上がろうとした。
「待って。」
往生際が悪いのはわかってる。
「…どんなことがあったか知らないけど…彼のこと、信じるんですか?」
「…最初から…信じてるの。…なのに、どうしても辛くて、怖くて私が逃げちゃっただけなの。そのせいで迷惑かけてしまって、ごめんなさい。」
彼女はベッドの脇で丸まった彼女の服を手に取り、それを纏った。
汚れたままのワンピース。
そのシミを見ながら彼女は小さく微笑んだ。
「…自業自得ね。」
その時、部屋の中にインターホンが鳴り響いた。
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