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ゆいと一緒に成瀬の車の後部座席に乗り込む。
ゆいは驚いていたが、成瀬は何も言わずに車を出した。
持って来たバスタオルでゆいの体を包み、彼女の腹部に付いた薄汚れたシミに心を刺される。
車内はマンションに着くまで静まり返り、時折ゆいの鼻のすする音と俺の咳が聞こえるだけだった。
成瀬はゆいが乗ってから、ほとんど何もしゃべらずに俺たちを降ろして帰って行った。
部屋に入ると、
ゆいと帰ってきたことに
胸が熱くなった。
ゆいをもっと抱き締めたかったが、
ベッドの中で顔を背けたゆいを思うと、話が終わるまで出来なかった。
ゆいをソファに座らせてから水を取りに行き、二人で水を喉を鳴らしてゴクゴク飲んだ。
喉が悲鳴をあげるほど痛み、声がかすれていたが、ゆいに語りかけるように全てを話す。
彼女が俺にとってどういう人物か。
俺の家族との関わり。
接待の帰りに会社で待ち伏せされたこと。
手帳を勝手に見られていたこと。
そして、
シャツに着いた彼女の匂いと
手帳に挟まれた彼女の手紙のこと。
話しの途中で何度も話しを止めて、ゆいが納得してるのか確認した。
ゆいはその度に静かに頷いていた。
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