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ゆいの体温を実感した途端、張りつめていた俺の中の何かが緩んでいくのがわかった。
大きく息を吐き、
体の力を抜いた。
それと同時に激しい頭痛と俺の体に溜まる熱を感じた。
喉はゆいに話す間にも声が出なくなるんじゃないかと思うほど痛んで、声は時折かすれた。
話す途中にもゆいが俺を心配したが、話は最後までしたかった。
「…秀一さん、もうベッドに入って下さい。ごめんなさい。こんなに体調が悪かったのに…無理させちゃって…。」
「ゆいのいないベッドでなんて、どうせ眠れなかった。少し休もう。ゆいも疲れただろ。」
もう、時刻は午前4時半。
帰ってくる頃には空が白んで夜明けがもう訪れるところだった。
ゆいは俺を寝室に連れて行き、ベッドに寝かせ、タオルケットを丁寧にかけてくれた。
「…ゆいも。」
「ごめんなさい。シャワー浴びて着替えてきます。」
「シャワーは後じゃダメなのか?」
ゆいはまだ潤んでいる瞳で小さく笑んで、まるで子供を諭すように優しく言った。
「…すぐに来ます。…全部、何もかも洗い流してから…。…いい子にして先に寝てて下さいね。」
体はだるくて、ゆいが戻った安心感で眠気が急に襲ってくる。
けれど、俺はゆいを待っていた。
ゆいの匂いと体温を抱きしめながら寝たかった。
ゆいは本当にすぐに戻ってきた。
まだ滴が落ちそうなほど濡れた髪が、ゆいも俺と同じ気持ちなんだと俺に思わせた。
ゆいを抱きしめようと手を伸ばすと、ゆいが俺に手を伸ばし、熱で火照った俺の頭を自分の胸に引き寄せた。
ゆいの胸に顔を埋め、
ゆいの体温と
ゆいの匂いと
ゆいの鼓動を
確かに感じた。
目頭が熱くなり、
熱いものが込み上げる。
風邪を引いてて良かった。
俺の鼻をすする音は
風邪のそれに紛れて
ゆいに涙を見せずに済んだのだから。
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