自業自得

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彼女の唇にもう少しで触れそうな時、 彼女がそれを避けるかのように顔を逸らした。 …え。 寝ているはずで、 偶然にそうなっただけなのに。 まるでそこには、彼女の意思があるかのように思えて、 それが無性に俺を苛立たせた。 そして、彼女は閉じたままの濡れた瞳で呟いた。 「……秀一…さん…。」 …こんな状況の中に身を置いて、 こんな目に遭わされて、 どうしてアイツの名前を…? 苛立ちに代えて、怒りと嫉妬が込み上げる。 「…俺は、"秀一"じゃない。あんな奴のこと…忘れて下さいよ。」 俺はごちゃまぜになった激しい感情に任せて、彼女の首筋にキスを落とす。 彼女の体温と共に彼女の鼓動を感じた。 彼女の何とも言えない、優しい匂いが鼻をくすぐった。 理性など、 かけらも残っていなかった。 俺は一度だけ、彼女を抱く夢をみたことがある。 最後までは抱けない儚い夢。 何度も何度も夢の続きがみたくて強く望んだが、 それ以来、彼女が夢に現れてくれることはなかった。 何度も彼女を夢見ることを夢見て、 俺は彼女の幻を相手に もがいていた。 何度も。 何度も。 その彼女が、 今、俺の見下ろす下にいる。 俺はタオルケットをベッドの下に除け、 上がりかけたワンピースの裾に再び手を掛けた。
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