2212人が本棚に入れています
本棚に追加
私と部長が着替え終わって、そろそろ夕飯という時、マンション取付の部屋の電話が鳴った。
これは固定電話ではなくて、マンションのフロントへ直通する内線みたいなもの。
これが鳴るって…?
「…何だ?」
部長もボソッと訝(イブカ)しげな表情でその受話器を取った。
「はい。西島です。…え?…はい。…あ、…申し訳ありません、掛け直します。」
三人が部長に注目する中、部長は一度、受話器を置いた。
「…何かあったんですか?」
心配になって聞くと
「ああ、おい、成瀬。お前、ここに来るまで、エントランス…マンションの正面玄関でインターホン鳴らさなかったのか?」
「え?あ、はい。ちょうど一緒のタイミングで入るおばさんがいたから一緒に抜けちゃいました。」
「…だから、ゆいが俺と間違えたのか。…そのおばさんだな。不審な男がマンションに入ってきたって、マンション中が騒ぎになってるらしい。」
「…え!?俺が!?」
「ふ…、不審者だって!!」
成瀬さんと美咲が騒ぎだす前に部長は再び受話器を上げて、フロントと話し始めた。
事情を説明して、何度も謝罪していた。
電話を終えると、私たちに向いて大きく息を吐いた。
「…こっ酷く、叱られたよ。」
「…すみません。」
成瀬さんが申し訳なさそうに謝った。
「いや、ちゃんと言っておかなかったからな。ここもセキュリティが万全ってことも売りの一つにしてるからな。変な噂や騒ぎは困るんだろう。」
「…そうなんだぁ。やっぱ高級マンションは違うね。…さっきも話してたんだけど、ゆいも早くここに住めばいいのにって。そうすれば、ゆいも安心だし、部長だって心配しなくていいじゃん。」
「…藤森もそう思うだろ?」
…あれ?
…話がすり替わった?
「なあ、ゆい。本気で考えてくれないか?…藤森だってこう言ってるだろ?」
最初のコメントを投稿しよう!