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ゆいの返事を聞きたいと思っていたが、藤森の声がそれを遮る。
「お腹空いちゃった!!ねえ、もう食べようよ!」
確かにバタバタしていてもう7時半を過ぎていた。
「じゃあ、美咲、テーブルに運んでくれる?」
ゆいもキッチンに入ってしまった。
乾杯の音頭は藤森がとった。
「成瀬さん、お疲れさま―!!おめでとー!!お疲れさま―!!部長もゆいもわたしもお疲れさま―!!」
藤森らしいその言葉に、成瀬は顔を綻ばせた。
…手巻き寿司なんて、どれくらいぶりだろう。
4人の手がテーブルの上で交差して、それと同時に会話も繋がる。
「私、次これにしよ!」
「これも美味しかったよ。」
「この組み合わせも案外イケるぜ。」
「秀一さん、これどうですか?」
「成瀬さんもしてあげよーか?納豆+いくらでどう?」
「…気持ちワリーよ。」
「藤森…想像だけで気持ち悪いぞ。」
「…うん、美咲。発言には気をつけて。」
会話にこと欠かず、ゆったりと手を進める。
「成瀬、この間は…悪かったな。」
今まで詫びる間もなく今日まで来てしまった。
「…あ、あの。…本当にすみませんでした。」
ゆいも俺に続いて頭を下げた。
「…あ、いや、そんなこといいっすよ。…また、こんな二人が見られたんだし。」
成瀬がニヤリと笑った。
「しっかしさ、あれから私も結構忙しいのよ?部長とゆいのこと、みんな私に聞いてくるんだもん。噂ってすごいよ。もう婚約してるとか。もうすぐ結婚するとか。…もう一緒に住んでるとか。にひひ。…でも、全部もうすぐ当てはまっちゃうのかな―!?」
…今日の藤森はやけにいい流れを作ってくれるな。
俺は藤森の言葉に乗じて、ゆいに再び切り出した。
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