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そして、週が明け。
私はいつもと変わらず
パソコンのモニターを見つめ
キーボードを打ち
伝票をめくる。
給与と支払のデータを今日中に仕上げようというこの日の昼間。
越石さんが事務所に姿を見せた。
「お疲れ様です。」
「お疲れさまです。」
越石さんの言葉に反応した私の言葉はほとんど反射。
けれど
この後、越石さんが私にどんな風に接してきても、私は今までと変わらない態度で対応するつもりだった。
「…精算書、遅くなってすみませんでした。…よろしくお願いします。」
「わかりました。…ありがとうございます。」
越石さんが頑張ってつくってくれた笑顔に、笑顔で返して
精算書を部長の目の届く位置で受け取った。
「…失礼しました。」
越石さんは少し硬くなった歩行で事務所を出ていった。
越石さんが私だけじゃなく部長もいるこの事務所に足を踏み入れることは、相当の勇気が要ったはずだった。
私は彼が事務所を出るまでその背中を見送っていた。
手にした精算書を見つめて気合を入れ直し、私はデータの最後の仕上げに取り掛かった。
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