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夕食が並べられて、手を合わせる。
「いただきます。」
「…どうぞ。お上がり下さい。」
箸を動かしながら元気のないゆいになるべく柔らかく言葉を掛ける。
「…いつまでもそんな顔してるな。せっかくの美味い飯が台無しだ。ゆいも食べろ。美味しいぞ。」
「…はい。すみません。」
ゆいはやっと笑った。
食べ終わってゆいがお茶をつぎ足してくれる。
そして、ゆいは自分の携帯をテーブルに置いた。
「…秀一さん、今週末は…予定ありますか?」
「ん?…今週は、あっても会社に行くくらいだ。どうにでもなる。何かあるのか?」
「…あ、あの。…家に…実家に…一緒に行ってもらえますか?」
「…あ、ああ。…挨拶に…行ってもいいのか?」
「…はい。お願いします。…今から実家に連絡してみます。」
ゆいはそう言って携帯を操作して耳にあてた。
ゆいの電話に聞き耳をたててしまう。
少しの緊張が俺を包みながらも、俺はゆいの決心が嬉しかった。
今日のことは単なる偶然で回避できたようなものだ。
このままでは本当に俺の身が持ちそうになかった。
そして、
ゆいが口を開いた。
「もしもし。…お母さん?」
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