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ケーキをゆっくり味わった後、父たちの予定があるので私たちは家を出た。
帰る間際に父が言ってくれた。
「…今度はもっとゆっくり出来るように来なさい。いつでも待ってるから。」
部長もまた丁寧に挨拶してくれたけど、その表情は来た時のものとは違って、眉が少し下がっていた。
ゆっくりと車を出して、しばらく走る。
けれど、何の前触れもなくコンビニで停まった。
「…秀一さん?何か…。」
そう言いかけて部長を見れば、前屈みになってハンドルに全身をもたれさせていた。
「…し、秀一さん?」
「…すまん。無事に終わって…急に…。」
部長はハンドルにもたれたまま顔だけを私に向けた。
…疲れたよね。
「…大丈夫ですか?今日は本当にありがとうございました。秀一さんの言葉も態度も、全部嬉しかったです。…帰ったらちゃんと…癒して…あげますからね。」
「…ホントか?はあ…。頼む。今日はそれが絶対欲しい。」
そんな部長らしくない甘えたセリフも
実家での堂々とした態度と言葉を思い出すと、
たまらなく愛おしかった。
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