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黙ったままの部長に代わって、美月さんが口を開いた。
「…ゆいちゃん。本当に何て言ったらいいかわからないわ…。私たちの亡くなった両親のことまで…そんな風に考えてくれて…ありがとう。本当に嬉しいわ。…でも、私は土曜がダメなの。私は日曜に行こうと思って予定してたから、秀一と二人で行ってもらえるかしら?」
「…そうですか。じゃあ、二人で行ってきますね。」
「…秀一。父さんと母さんにちゃんと報告して来なさいよ。」
「…ああ。」
美月さんの目は少しだけ潤んでいるようにも見えて、部長は短く返事をした。
話しがまとまって、私たち三人の中に静かな空気が流れた時。
お店の戸がガラガラと音をたてて開いて、一人のお客さんが見えた。
「こんばんは~。」
穏やかな声の先を何気なく見ると…
「…森田部長!?」
「んあ?ああ、何だ今日はデートだったのか?」
いつも通りの会社スタイルのままの森田部長がこれまたいつも通りの笑顔で返事をしてきた。
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