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涙が溢れた。
父と部長の想いに触れて。
私が大切だと思う人に、こんなにも大切に思われてるなんて
自分は本当に幸せ者なんだと思い知った。
「…やあね。ゆいったら。…まだお嫁にいくわけじゃないのに。」
そう言った母も鼻をすすって、その目は少し赤かった。
…お母さん。
すると、部長が私に優しい眼差しを向けてくれて、すぐに父と母に視線を移した。
「いずれ必ず、正式にご挨拶に参ります。」
部長の言葉に父がやっと顔を崩した。
「…お待ちしてます。はは。でも楽しみなような。…怖いような。ははは。」
それは父の本心だろう。
私がお嫁にいくのを待ちわびつつも、寂しいような。
また、胸の奥が熱くなり、同時にそれが目頭にも伝わる。
「さ、せっかく頂いたケーキ、みんなで食べましょう?今、用意するわね。…ここじゃ、堅苦しいから、リビングに移りましょう。」
少ししんみりとしぼんだ空気をまた温かく膨らみ直すように母が明るく言って立ち上がった。
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