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午後のお客さんを見送った時には、満面の笑みの美咲に声を掛けられた。
「…嬉しそうじゃん。いいなー婚前旅行!」
「ちょ、ちょっと。声が大きいし。…普通のだよ。普通の…。しかも、お役目があるんだから、そんなに自由には出来ないの。」
「…ふーん。どっちだっていいけど。いいじゃん式場の下調べ的な。その場で気分が盛り上がってそのまま結婚しちゃったりして?」
「…そ、そんなわけないよ。」
「どーだか?…ま、とにかくお土産待ってるわ。」
定時になり、残業時間になって一時間が経った頃、
部長が都合で自分も帰るからと琴ちゃんに上がるように言って、池口さんにも早く帰るように言った。
琴ちゃんが帰った後に私と部長も上がることにした。池口さんはもう少しやると言ったので、施錠をお願いすることにした。
「お疲れさまでした。お先に失礼します。」
部長と少し時間をずらして事務所を出たけれど、部長より先に出る私に池口さんは意味ありげに笑って見せて、
「お疲れさま。」
優しい眼差しで送り出してくれた。
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