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中に納まっていたのは、小さな石が輝く金色のボールチェーンのネックレス。
「…嘘…。」
「…中身がちゃんとあるんだから、本当だろ?」
私はそれを箱のまま目の高さまで掲(カカ)げて、キラキラと光る石を見つめた。
「…綺麗…。」
「…その石、お袋の形見の指輪から取ったものだ。」
「…え?」
「お袋が大切にしていた指輪だったらしい。…少し前に姉貴からもらって、ゆいにって。昔の指輪だからデザインも古いし、サイズも合わないと思ってな、石を外して、ネックレスに作り変えてもらったんだ。…婚約指輪にすればよかったが、サイズがわからないし、ネックレスにした。」
…部長の…お母さんの…?
「…そんなに大切なものを…。」
「…だから、大切なものだから、ゆいに贈るよ。」
…涙が…溢れないわけ…なかった。
「貸してみろ。」
部長がネックレスを手にして、私は下ろしていた髪の毛を首元から掻き上げた。
華奢なネックレスの冷たい熱が首に触れた。
「…俺にはもう親がいない。何かに頼りたい時に、その存在がいないことで、ゆいには苦労させるかもしれない。…大変かもしれない。でも、不安にはさせない。
…俺がいるから。
必ず幸せにする。…だから、俺のことも幸せにしてくれ。…ゆいがいてくれれば、俺は幸せになれるから。」
目からこぼれる涙を拭いて、その手で胸元の小さな石に触れる。
…部長のお母さんも…お父さんも…
ここに…いるよ。
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