序章 我ハ追想ス

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「隊長!!僕も隊長と同行させて下さいっ!!僕も隊長と一緒に囮になります!」 否、一人だけ居た。 そんな声を上げたのは、紺色の軍服を身に纏う漆黒の髪に常人でない証の真紅の大きめな目を持つ、愛らしい姿の少年だった。 か弱く儚そうな印象を与える外見に反してその瞳に宿る意志は強く、強靭な精神を持っている。 「残雪、斬り込み先陣を切るのは私と楓の務めだ。お前の勇敢さは私たちがよく知っている。だからこそ、安心して後を任せられるのだ。」 そんな少年の言葉に、百合は目を細め大事なものを慈しむように、その頭を撫でる。 少年の名前は、白露 残雪。 百合と楓と同じ『神降ろし』で『天強』最年少の隊員だ。 心優しいながら芯の通った強さを持つこの少年は、最年少ながら百合や楓を含む隊員全員から信頼されている。 「雪君、私たちの背中は雪君たちに任せたよ。」 百合の横に立つ赤みを帯びた髪を除けば百合にそっくりな外見をしている少女は百合の双子の妹、楓だ。 凜とした百合と比べて柔らかい雰囲気を持っており、見た目以外は大分異なっている。 楓も百合同様、敵陣に斬り込む囮役なのだ。 「最早戦局は決している…それでも私たちは御国の為に戦わねばならぬ。」 そう言い、百合は脇に置かれた巨大な砲を両手に持つ。 12.7連装砲と呼ばれるそれは本来艦艇に装備される砲身であり、無理矢理改造した物を『神降ろし』特有の怪力で操っているのだ。
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