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「がっ…!!…かえ…で…楓…何処だ…無事…なの…か…?」
その火砲はあろうことか、既に瀕死の状態であった百合に次々に直撃弾を当て、百合は目を背けたくなるような重傷を負い、それでも倒れない。
出血で意識が混濁し、妹の名前を口にしながらサーベルと残骸と化した砲を振り回し、見えぬ目で戦場を見回す百合。
戦いの混乱の中、見失ってしまった妹を探して。
高く響く悲痛な叫び声は次第に掠れ、やがて聞こえなくなってしまった。
「ぐ……きゃぁっ!!」
その楓も無事ではなかった。
激しい銃撃を浴びて身体中を真紅に染め、最早盾の機能すら果たしていない機銃を振り回しながら、なおも進んでいる状況なのだ。
他の隊員も満身創痍で、精神力のみで楓についていっている。
しかし、歩を進めるごとに隊員は倒れ、どんどん数は減っている。
「…なんでだよ。」
ただ、一人を除いて。
「なんで僕に当ててくれないんだ!!僕を隊長やみんなの場所に送ってよ!!」
ただ一人、残雪だけは無傷のまま鬼気迫る形相で叫び散らしながら歩を進めている。
残雪に雨の如く降り注ぐ機銃は当たらず、砲撃の爆風は有効打を与えない。
そう、それが皮肉にも『神降ろし』である残雪に宿る『神』の力であった。
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