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それは時々、アメの肩にモズやシジュウカラなどが、平気で止まったりするほど、気配は見事に消えていた。
アメは今日も街をとぼとぼと一人で歩いていた。
そうしてアメは小さな小川を見つけ、そこにかかる小さな橋を渡り、川辺に咲く濡れたアジサイが、滴を垂らして輝くのを眺め、また水嵩の増した小川の川沿いの金網に沿って、歩いて行った。
やがてアメが歩いていると、鮮やかな傘が二つ並んでいるのが目に入った。
どうやら近所の主婦たちがこの雨の中、道端で立ち話をしているようだった。
「よく降るわね」
「やあねえ、また雨なんて‥‥」
恨めしそうに傘の陰から、鉛色の雲が立ち込める、ぐずついた空を見上げて、主婦たちは毎日の洗濯物を乾かす苦労を思い、天候を呪っては口々にそう言った。
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