苦しい恋の始まり
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ホテルを出て駅まで歩く道でも、二人の会話はほとんどなかった。 「じゃあね。俺、こっちだから」 駅に着いて改札を通るとすぐに流司は言い、私とは別のホームへ向かって進む。 あまりにも呆気ない別れ際。 取り付く島もない。 初めて寝た直後の男から、ほんの僅かな優しささえ、与えてもらうことは出来なかった。 その帰り道、五月の初夏の風が冷たく感じたのを覚えている。
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