年齢の壁

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私がまだコーヒーを飲んでいる最中、流司は言う。 「俺、二人分のファストパス取ってくるからさ。透子はここで、ゆっくりコーヒー飲んでていいよ」 一見、気の利いた申し出。 でも本当は、一人取り残されるより、一緒にコーヒーを飲みたかった。 ファストパスも一緒に取りに行きたかった。 だけど流司は一人で動きたいのだ。 私は本音を隠して、「ありがとう」と返す。 立ち上がって店の外へ出て行く流司の後姿を、私は席に座ったまま見つめていた。 流司は大勢の人たちの中に紛れていく。 手を繋いで楽しそうに歩いている若いカップルも多い。 私は切なさを感じながらコーヒーを飲んでいた。
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