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日を改め、すっかり実家に居ついている姉貴と分譲マンションへ行った。
姉貴は1棟しかない最上階を希望した。
「マンションは、隣人がどういう人物かで7割の快適が保障されるの。」
「・・俺、高所ダメだから。」
「はぁ?!なにそれ?!
あらっ!このコーヒー美味しいじゃない!」
息巻いていた姉貴が、マリサンに声をかけた、らしい。
びくっとお盆を胸に抱え直し、ひきつった笑顔を向ける。
「駅前のホテルのデリバリーです。
お口に合ってよかったです。」
「駅前・・?」
「レモンドだってよ。」
「あそこのデリなら、紅茶がお勧めよ?」
「・・おい。いい加減にしろよ。」
さっきから、茶菓子が無いだのとマリサンに絡みっぱなし。
なんなんだ、こいつ。
だってーと拗ねて頬を膨らませる。
その様子を、ひょろりとしたヤザキサンがくすりと笑った。
「なによ?!」
「はは、すいません。
あまりに可愛らしいご様子でしたので。」
「・・あら、まぁ。そ・・そう?」
やっと大人しく口を閉じた姉貴のタイミングを図って、ヤザキサンが話し出す。
マリサンもその隣に腰を下ろし、契約書類を確認していく。
・・はぁ。やっと本題に入れる。
「奥様のご意見は3階でしたが、そのあたりは・・」
「奥様?!」
「ヤザキサン!!」
ガタンっと椅子をひっくり返し立ち上がった姉貴と、それ以上に慌てた俺の様子に、マリサンがヤザキサンの背中をばしっと殴った。
「やっ・・やだな!!矢崎さん!!
それは別のお客様ですよ!」
「え?いや、だって、真理さん。
先日、スレンダーな奥さ「矢崎さん!!」
「・・矢崎さん。何か勘違いされてませんか。」
「勘違いしてるみたいですよねっ!!」
「え・・?」
いいから、だまって!!とマリサンが睨みを利かせる。
ぽりぽりと頭を掻きながら、立ち上がったままの姉貴に、座るように促すと、不思議そうに俺とマリサンとを見比べた。
・・この人。
空気読めねぇ営業って、ダメだろ・・。
「と・・とにかく。3階なんて嫌よ。
せめて5階の庭付きにしてよね。」
「てめーが草むしりとかすんのかよ?」
「・・ばっかじゃない。」
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