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姉貴のキンキンする声を無視できずに、不本意ながら5階で契約をする。
まったく、なんでこっちが妥協しなくちゃなのよ!!とマリサンにまたも絡んでいたが、そっくりそのままの台詞を俺が返すと、はははとヤザキサンが笑った。
その乾いた笑い声に姉貴が過剰反応する。
「貴方ね!!男子たるものみだりに笑い声など立てるものじゃないわよ?!」
「はは・・とすいません。
仲が良いので、うらやましいなぁと。」
「・・まぁ。・・そ・・そうね。
由樹はね、あたしの唯一の理解者だから、ね。」
「・・・は?」
「だから、いいの、どれだけ甘くたって、いいの。」
早口で言い切ったものの、ぷいっと顔をそむけた照れた姉の様子。
悪いものでも見てしまった、そんな戸惑った表情のマリサンと、呆気にとられた俺に、ははは、と優しい笑い声が届いた。
「はは。すいません、・・笑うと怒られますね。」
「・・も、いいわよ。
今日は手付まで、しかできないんでしょ。
さっさと本手続進めてね。」
「は・・はい!
次回はお紅茶をご用意しておきますねっ!」
「・・あたし、紅茶はよくわからないのよ、本当は。
だから・・アップルティーが好きなんだけど・・」
「はいっ!!」
にこにこと人懐っこい笑顔をのマリサンに戻る。
ヤザキサンは、不思議そうにマリサンと姉貴を見た後、心配そうに俺に耳打ちした。
・・奥様のご意見を尊重しないで破棄になったりしませんか?
ふ・・。
コノヒト。
「大丈夫ですよ。」
「はは。それならよかったです。
では、審査終わりましたら連絡させていただきます。」
コノヒトみたいな営業ばっかりだたったら、利益少なそうだけど。
リピーター率、異様に高いんだろうな。
・・って。
マンションなんてそうそうリピートしねーか。
やっぱ。ダメじゃん。
「でもさー、なんで専業主婦じゃダメなのよ?
即金で払うって言ってるんだからさ?
いいじゃんねー?」
「・・社会的信用度の問題だろ?」
「失礼しちゃう!!
あ、ねぇ、ケーキ食べて帰ろ。」
「・・・はぁ?」
「お茶菓子、食べてないじゃん。」
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