155人が本棚に入れています
本棚に追加
「みーちゃん、聞いてくれてるかな?」
その問いかけは既に何度か目だった。
陽子の声が耳に届きハッと我に返ったような顔をした美雪は、慌てた口ぶりでこう言った。
「あっ、あの……ここって、何屋だったんでしょうか。マッサージ屋かと思ってたんですが……」
動揺したような顔をしている美雪に対し、陽子はさも冷静な顔つきで返答をする。
「マッサージもしますよ。その人の症状に合わせて。だから、人によってはマッサージをしない人もいるけど、今日のあなたを見たところ、何か話すよりも、きっとまずは体をほぐした方がいいと思うわ」
「そうですか」と返事をしたものの、頭の中は別の疑問がどっと溢れてくる。
「マッサージって、一体いくらなんですか?下に料金も書いてなかったし、だから、その……」
「心配しなくていいわ」
口を横に大きく開き、殊更幸せそうな笑顔を見せる陽子に、美雪はキョトンとする。
「うちは料金設定ないの。その都度その人が支払いたいと思う料金でやってるから。お任せなのうちは。だから、支払いの金額はみーちゃんが決めていいのよ」
「え???そんな話ってあるんですか???」
ウマすぎる話には罠がある。これは宗教の勧誘か、エステか。実は気がついたらすっごい高い物を買わされるんじゃないのか。
瞬時にそんな事があたまに過ぎった美雪の顔はひきつっていた。
そんな美雪の心を見透かしたかのように、陽子はあっけらかんとしている。
「みーちゃん、あれでしょ?宗教とか、エステとかみたいに、気がついたらどんどん高額な物買わされちゃうって、今、怪しんでるでしょ?」
―その通りだ―
最初のコメントを投稿しよう!