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「待ってるんです。」
「何を?」
「スカウトされるのを。」
「どこで?」
「ブログに決まってるじゃないですか。」
「あぁぁぁぁ、、、そうなんだぁぁぁ。」あまりの自信に溢れた答えに、普段困った様子をほとんど見せない陽子の顔がひきつっていく。そんな陽子の様子に有美が合いの手を差し伸べた。
「アイドル活動以外に、普段は何をされてるのかしら?」
「パンの工場で週四回くらい働いてます。そこのね、工場長もすっごくむかつくやつで。本当は早く辞めたいんですよね。」
「そっかぁ。」と、一言を述べるのが有美の精一杯。
引きつった陽子の表情と眉間に皺を寄せないように作り笑いを浮かべる有美ときららの間に、サーっと乾いた空気が流れる。
「なんなんですか、二人とも。私のこと馬鹿にでもしてるって言うんですか?」
「馬鹿になんてしてないわ。ただね、どこから話そうかなって、思っただけ。」
陽子はきららの瞳を見つめ、「本当になりたいのかなぁ?って、ちょっと思ったりして。」と、ようやくいつ言おうかと悩んでいた言葉を口にした。
「本当になりたいに決まってるじゃないですか。いや、私はなれるんです。そういう星の下に産まれてきたって事、私は知ってるんです。」
正々堂々と鼻息荒く答えるきららの瞳をじっと見つめ続けながら、陽子の質問は続く。
「そしたら、どうしてまだスカウトは来ないのかしら?」
「皆が私の魅力にまだ気がついてないんですよ。」
「でも、気がついてくれてる人もいるのよね。そういう人と交流したりしてファンを拡大する事だって出来るじゃない。」
「そんなのマネージャーもいないのにやったら危険ですよ。どこにどんな奴が潜んでるか分からないし。」
「そしたら、ファンの人可愛そうね。せっかく応援してくれてるのに。危険だなんて言われちゃって。」
その言葉を聞いた瞬間きららは、ギロっと陽子を睨みつけた。
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