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「あぁ~、まぁね~。あの子、変わりたくて仕方なかったみたいだし、素直だったから、割とね、スムーズだったよね。」
「でもさぁぁ、陽子ちゃんは、ここに来る人来る人、どんどん変えていくのに、私の方はさ、多少良くなってるものの、相変わらずって言うか、、、、」と、言葉が尻切れトンボになっていき、終いには、「あぁぁぁぁ」と、深い溜息になっていく有美。
「私が有美さんの会社で有美さんの立場だったら、『実際の所、私はどうかしら?』って、いつも思ってるわ。」と、言いながら、同じようにソファーに腰掛けた。
「どういう事?」と、少し遠くに目線を送っていた有美は、目の前に座った陽子の方へ視線を戻した。
「だって、ここに来てる人は、みんな心の底で『許したい』っていう感情を持ってここにやってくる。だから、簡単なだけだと思うよ。でも、有美さんのスタッフとかは、別にそういう心情になってる訳でもないと思うし、、。そういう中で、今の私がここでやってる事を有美さんの会社で言ったり、促したりしても、実際の所、難しいと思うわ。だから、私は有美さんの事、すごく尊敬してるの。部下やスタッフを許すって、意外に出来そうで出来ないものね。」
「遅刻とかね。」
有美のドヤっとした顔に、陽子は思わず吹き出す。
「あぁ~、あの子どうなった?」
「結局辞めたよ~。遅刻の数がかなりスゴイ事になっちゃってて、だから、総務から通達が来たのよ。『減給しますね。』って。そしたら、怒っちゃって辞めちゃった。」
「やっぱりね~。でも、有美さん全然落ち込んでないね。」
「前はね、一生懸命働かせる事が私の役目だと思ってたからね。遅刻するのも、辞めちゃうのも自分の責任だって、思ってたし。でも、それすら正しくないんだ。って思い始めたから。」
「そうよね~。」
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