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「は、はじめまして。西園寺きららです。」と、言ったその声は、可愛くしようと鼻にかかっているものの、返ってそれが無理している事を印象づける。髪は「いつ切ったの?」と突っ込みたくなるくらいボサボサ加減が満載で、少なくとも一年くらいは美容院に行っていないだろうと思わせるほど、前髪だったはずの髪はだらしなく唇のあたりまで伸びている。「三二歳、それこそ詐欺。」とも言えるほど、見た目の印象は老けていて、太っている。と言うか、むくんでいる。普段メイクもしていないのだろう、完全に浮きまくったメイクといつの時代に流行ったのかと問いたい花柄のワンピース。全てのセンスが「残念」と言いたくなってしまう様相に、有美の眉間は思わずギュッとなる。以前、その事を陽子に指摘されたので、最近は出来るだけそうならないようにしてたのだが、彼女の登場に、彼女の眉間には、封印されていたはずの皺がくっきりと深く刻まれていた。 有美はこういうタイプの女性を一番の苦手としていた。第一印象から、何かを勘違いしているように見える女、現実を踏まえていない発言をする女が大の苦手だったが、ヘルパーである有美の隣に相談者が座る事になっている。彼女が近くに来ても、自分の心の中が見破られないようにと、最大の作り笑いをして、自分の隣に座るように彼女を促した。 手短な自己紹介を済ませると、陽子は早速本題に入ってく。 「メール読んだよ。反対しているのは、お父さん、それともお母さん。」 「りょ、両方です。二人とも私が一般的な道に進んだ方がいいんだと思ってるみたいで、私がアイドルになりたいって言うのを馬鹿にしてるんです。『お前にはなれっこない!』って。『年が行き過ぎている。』って。『アイドルなんて目指すの辞めて、彼氏の一人でも作ったらどうか。』ってそう言うんです。」
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