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気分が良かったのは、目覚めた一瞬だけ。会社に行こうと思った瞬間から、何とも言えない体調の悪さが身体を支配する。 「行きたくない。」何度もそう思う自分をグッドタイミングのまじないで、元気づけ、なんとか会社までは辿り着いた。 更衣室までの一歩一歩は非常に重く、本当はもう帰りたい恐怖の渦の真ん中にきららはいた。 そんな恐怖はやはり、きららの中だけのものだったのだろうか。会社の仲間は昨日と変わらず、普通に声をかけてくれる。普通にきららの周りに人が集まる。昼食も誰かが一緒に食べてくれるし、自分が勇気を出して入ろうとしなくても、自然と輪の中に入っている。今までのきららの生活と比べたら、格段に幸せそうなのだが、昨日から始まった「普通」。それがきららにとっては、どうしようもない恐怖だった。 恵子がブログの話をしたのは、それっきり一度もない。 陽子の言った通り、「会社の人は明智蜜香と友達っていうきららちゃんを羨ましく思う状況がしばらく続くだけだと思う。」と、言うのが、正解なのかもしれない。 だけど、きららの心の中は、バレてるんじゃないか?、自分のいない所では、嘲笑ってるのではないか?と、冷や冷やした気持ちが薄れる瞬間はなかった。いや、会社に行けば行く程、その気持ちばかりが大きくなっていった。次第に、その毎日に疲れ果てて、会社を「病気」と、言っては、休むようになっていった。 相談しに行ってから二週間くらい経っただろうか。 きららはメールを送った。 「この間はありがとうございました。あれから、色々考えたんですけど、やっぱり会社辞めようと思います。どう思いますか?」 しかし、待てど暮らせど、そのメールに返事は戻ってこず、業を煮やしたきららは、自らの決断で会社に辞めたいと伝えた。
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