7/8

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
きららはうんと思い出そうと天井を仰いでみたが、さっぱり思い出せそうもなく、「えっと、いつでしたっけ?」と答えた。 「一番最初に会った日だったんだけどね。」 「ごめんなさい、全然覚えてないです。」 「いいの、いいの。あの時、私が言ってたのは、今のきららちゃんみたいな事を言ってたの。」 「私?、ですか?」 「そうなの。きららちゃんは自分でも気が付かないうちに、お花に夢中になっていて、みんなが知らないような知識も沢山持っているよね。きっときららちゃんは、自分でも気づかないような無意識の場所でお花の事を四六時中考えているんだと思うわ。夢をスムーズに叶える場所ってね、実はそういう場所なのよ。」 「そういう場所?」 「きららちゃんにとっては、お花ってすごくそういう場所なんじゃないかなって、私も思う。新しく始める仕事は、お花関係にしてみるのは、とても良いアイディアだと私も思うわ。」 「私が、お花屋さんですか?私が?だって素人ですよ。」 「みんな素人ですよ。」きららの言葉に柳原が答える。「僕も今素人ながら、会社で頼まれた事をプロとして、自分ごまかしながら、一歩でも前に進むんだと思って、一生懸命やってます。それに、始まりからプロの人なんていないですよ。みんな最初は素人なんだし。」 「私も、最初は楽譜もコードも何にも分かんなかったけど、歌手やってる。今も分からない事だらけで素人に毛が生えたみたいなもんだよ。」 苦笑いしながら言う密香の言葉をきららが大きな声で遮る。 「そんな。蜜香さんのライブ本当に凄かったです。私、プロの世界を初めて知って、本当に驚いて、感動で胸がいっぱいで。」 「って、ほら、お嬢ちゃんがプロだって思う佳菜子ちゃんだって、自分を素人って思ってるくらいなんだからさ、あなただって出来るさ、やってごらんよ。」 「そうだよ、そうだよ。」と、周りの声が大きくなり、「花屋に再就職」の案だけが、一人歩きするかのように盛り上がっていく。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加