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まさか、こんな展開になっていくとは予想もしていなかったきららは、うろたえるようにおどおどしていたが、陽子がどっしりと構えるような瞳で見つめながら、「他に何も見当たらないんだったら、こういうきっかけ活かしてみたら?」と、促すと、思わず、「は、、、い。」と答え、恐縮するように頷いていた。 その声を聞くと、周りは更に盛り上がり、それぞれのスマホやらタブレットやらで、勝手に花屋の求人募集などを調べ出し、きららの就職活動が勝手に進んでいく。 「あ?ここいいんじゃない。」 「ここなら許し屋の近くだね。」 「でも、私、家、秩父なんです。」 「いいじゃん、いいじゃんこっち出てきちゃえば?それに秩父からならギリギリ通えない距離でもないし。」 「他にもあるよ。ほら、」と、幾つもの選択肢を渡され、あれよあれよと言う間に、きららの再就職は道筋はあっという間に整えられた。 幾つかの候補の中から、きららは所沢駅の最寄りにある花屋を選び、そこに再就職した。そして、これを機に一人暮らしを始める事にし、家を出て入間に部屋を借りた。 まるで、特急電車に乗っているかのような超高速の連続だった。 何も変化がないと思っていた三二年間の中で、こんなにも唐突で、こんなにも予測しない事が幾つも幾つも続くものかと思った。
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