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退職、引越し、再就職と、今までのきららでは考えられないような過密スケジュールが続き、ようやく落ち着いたと思い、許し屋に足を運んだ時には、既に二ヶ月の時間が過ぎていた。 その間に世の中は、新しい年を迎えていた。川越の街もお正月一色で、晴れやかな彩りで埋め尽くされる。そんな商店街を通り抜け、せっかくだからと恋愛祈願で有名な川越氷川神社まで足を伸ばし、少し遅めの初詣を済ませると、きららはまた来た道を逆戻りして、颯爽と目的の地へ向った。 お正月の三が日も明け、用事もなく時間を持て余している者が多いのだろうか。扉を開けたその向こうには、午前中にも関わらず、もう五人のものが、持参の手土産や酒を片手に酒盛りが始まってる。 皆の様子を見て、「しまった。私もプレゼント持ってこれば良かった。」と思い、きららの身体はやや後ろに下がった。もう一度、扉を閉めて、商店街に行ってこようと、こそこそしていると、酒盛りで盛り上がってる美雪が突然立ち上がり、「きららさんでしょ?」と、大声で声をかけた。直様立ち上がると、きららの方に歩み寄る。そして、「なんか、すごくきららさん変わりましたね。」と、嬉しそうに微笑んだ。 「そうかな?」と照れるきららに、「許せたんですね。」と、美雪はまるで自分の事のように嬉しそうな顔をした。 「さぁ、きららさんも一緒に飲みましょうよ。みんな朝から集合して、結構出来上がってるから、ついてくの大変ですよ。」と、玄関先で後戻りしてるきららの手を引っ張り中に連れ込もうとする。 「あの、美雪ちゃん。あの、私、手土産を持ち合わせて来なくって、ふらっと寄っちゃったから。だから今から、用意してきたいんだけど。」 「いいんですよ、いいんですよ。そんな事気にしなくって。」と、いつからそうなったのか、美雪はまるで自分の家に人を招き入れるような口ぶりで言う。 「おじょうちゃん、就職も決まったのか、それに許せたんだろ。したら、お祝いだ。こっちにおいでよ。」と、すっかり酒も回って上機嫌の谷も声をかけ、「こっち、こっち。」と手招きをして、きららを呼び込む。 そして、きららが着座すると、きららの再就職、そして「許せたこと」をお祝いして乾杯となった。
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