20人が本棚に入れています
本棚に追加
「どう?きららさん、許せるようになった気分は。」今度はリポーター気取りになった美雪が、右手をマイクのようにして、きららの口元に差し出す。
「う、、、ん、って言うか、私の場合は、最初から誰も相手がいない所で怒っていたような気がする。」
「それ、どういう意味ですか?」
「なんか、美雪ちゃんは、ほら、、あの、、」
言い辛そうな口ぶりを見て、美雪はピンときた。
「同僚と結婚しちゃった元彼の事ですか?」と、自己申告する。
「うん。」
「気にしなくていいですよ、私、彼と結婚しなくて良かったなって思ってますし。」
「でも、、うん」
「だから気にしなくっていいですから、相手がいない所で怒ってたってのは?」
「私、最初、ここに来たのは、アイドルになりたいのを親に反対されている事を相談しに来たんだけどね、なんか今思えば、そんなの全然違ったの。そんな事、実はそれほど悩んでなかったんだと思う。だから、、許したかって言われると、どうかな?って感じだけど、、。」
「そうなんですか。でも、すごく変わったように見えますよ。アイドルみたいにキラキラしてるように見える。」
「私が??そんなはずないよ。」
「そんなはずありますよ。髪型も全然違うし、服装も今のが似合ってるし、なんかすごく自信のある感じが伝わってくる。」
「本当に?そうかな。でも、あれから前の会社辞めて、今は花屋さんで接客業してるから、多少でも身なりに気をつけなきゃって思い始めて。工場だと、服も着替えるし、髪も帽子の中に入れるから、何にも気になってなかったんだけど。」
「良かったんじゃないですか?辞められて。今は、花屋のアイドルですね。」
美雪のその一言に便乗するように、周囲は、「よ、アイドル」、「花屋のアイドル」など、掛け声が飛ぶ。
最初のコメントを投稿しよう!