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悪夢の瞬間、それは昼休みに起こった。 朝、約束していたお土産を配布するのを待ちわびた同僚たちは、一緒にご飯を食べようと自然ときららの周りに集まってくる。そんな状況を心の底から楽しんでいたきららの気持ちは、後輩恵子の悪気のない一言でガタガタっと崩れていった。 「西園寺さんって、ブログやってます?」 昼食を取り、お土産を配り終え、午後からの作業へと二人で向かっている時に、その言葉は投げかけられた。 その一言は、どんなホラー映画よりも心霊現象よりも、背筋が凍るものだった。 「やってるわけないじゃん。」と、無表情に一言返すと、「やっぱりそうですよね~。」と言いながらも、何故そんな質問をしたのか、説明し始めた。 「明智密香のライブがすっごく気になって仕方なくって、ネットで色々検索してたんですよ。そしたら、きらら姫っていうブログがあって、その人も行くって、しかも関係者でって言ってたから、ひょっとしてって思ったんですけど~。」 「人違いだよ。」と、否定をすると、恵子は笑いながら、同意する。 「そうですよね~。なんか業界通っぽくて、すごいセレブだって、その日記に散々書いてあったし、でもね、なんか笑えることに、そこのサイトすごい炎上してて、日記に書いてある事は嘘だって、すごい沢山コメントされてるんですよ。たまにブロガーさん本人さんがそれを否定したりって戦っちゃったりしてて、なんか結構面白いんですよ。そう言えば、明智密香のツーショットもブログにアップするとかしないとかでも揉めてて、もうアップされてるのかなぁ?あ、関係者席にそんな感じの人、西園寺さん見かけませんでしたか?」 「いや、私には全然分からないけど、、」 「そうですよね~。変な事聞いちゃってごめんなさい。仕事終わったら、後でそのサイト見せますよ!結構面白いんですよ。なんか嘘っぽいって言うか、イタイ感じが色々して。」 「そうなんだ~。」 他人事のように聞こえるふりをしていたが、いつ自分の事だとばれるのではないか?ばれるのではないか?と、ヒヤヒヤして仕方がない思いだった。 背中にはかいたことのないような大量の汗がじっとりとはっていた。唯一の救いは、昨日衝動的にブログを消した事。ギリギリ自分の写真をアップしなかった事だった。 ただただ、あの一瞬の閃きに感謝を覚えたものの、「イタイんですよ。」と、嘲笑った恵子の姿に心が傷んだ。
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