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午後二時、ようやく二人は江ノ島に到着した。カーナビで検索すると、江ノ島や鎌倉はひどく渋滞していた。だから、藤沢市に入ってすぐ、二人は車を駐車場に止め、そこから小田急線に乗り込み、江ノ島を目指した。
「海が見える~」
「富士山も!すごい!」
弁天橋から臨む風景は、海も島もそして富士山も一望出来る。ついさっきまで、地元の喫茶店で過ごしてたとは思えない程、タイムスリップしたような気持ちに二人はなった。
江ノ島神社でお参りをし、奥の方まで散策をし、来た道の帰り途中で、かなり遅めの昼食となる、しらす丼を頬張った。
日の暮がすっかり早くなった十月、四時にもなると辺りはすっかりオレンジ色に包まれる。
せっかく来たのだからと、有美と則子は鵠沼方面に足を伸ばした。水族館の前にある東浜の階段に腰を下ろし、波風と夕陽、そして少し遠目になった江ノ島を眺めた。
「今日は楽しかったね。突然だったけど、江ノ島来て正解だったなぁ。則子ありがとうね。」
その言葉に、「うん。」とだけ、頷いた則子の顔は、また遠くを見つめる表情になった。
沈んでいく太陽と波の音、そしてしっとりと流れる風。喋らなくなった則子へ目線を向けるのを止め、有美は久しぶりの自然の英気を取り込もうと、心をその場所に預けていた。
「、、、、、、の。」
則子は呟くように囁いたが、その言葉は波の音にかき消され、有美の耳には何を言ってるのか、届かない。独り言かもしれないと、有美はそのままその言葉を聞き流した。すると、また、ポツリと則子が呟く。
「、、、れたいの。」
有美は、則子の方に顔を向けた。則子は、また呟く。今度は、有美に届くように、はっきりとした言葉で。
「別れたいの。」
目をまん丸くした有美には、「え?」の一言しか出てこない。
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