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―相談にのってほしい。―
そう則子からメールが届いた時から、きっと悩みの種は家庭の事だろうと思っていた。でも、今日の則子の様子を見ていたら、一時的なストレスが溜まっていただけなんだろうと、有美は思っていた。こうして二人で遊んでいるうちに、何を相談したかったのかも則子は忘れ、いつもの奥様に戻っていくんだろうと思っていた。だから、まさかのこのタイミングで、そんな一言を則子が呟くとも思っておらず、後は、電車に乗って、楽しく帰るだけと思っていた有美は驚いたと同時に、困ったと思った。何も言わない有美を構わず、則子は本題を話し始める。
「もう、何もかもが無理な感じがするの。旦那の事が嫌いだし、子供だって小さい頃はあんなに可愛かったのに、気がついたら憎たらしくて、憎たらしくて仕方ないの。ご飯だってもう作りたくない。家の事だってなにもしたくない。もう家に帰りたくない。」
その横顔は震えていた。涙を堪えるように、口元が揺れている。「どうして?」なんて、軽々しく口にすら出来ない雰囲気が彼女から発せられていた。どうしたらいいものかと、暫く考えた末、有美は口にする。
「でも、もう夕方だよ。そろそろ帰らないと、みんな心配するんじゃない?」
「でも、帰りたくない。それに、最近は私も夜、出てる事が多いから、みんな心配なんてしないよ。」
「心配しないって言ってもさ、でも、子供は、お腹空かせてるんじゃない?」
「もう、自分の事はある程度自分で出来るよ。家にカップラーメンも冷凍食品も置いてるし、お腹空いたら、なんか食べるでしょ。」
「あのさ、そういう意味じゃなくって。」
「ねぇ、せっかくここまで来たんだし、今日はどっかここら辺で泊まろうよ。有美、明日も休みでしょ?」
「休みは、休みだけど。そういう問題じゃなくって。」
「だって、私たち二年ぶりなんだよ。家族は明日も会えるし、でも、有美は今度いつ会えるか分からないでしょ?」
「そんな事ないよ。お互いに住んでるの所沢だよ。いつだって会えるじゃん。」
「って、言いながら、二年だよ。こんな事、滅多にないからいいでしょ?」
「いいでしょ?って、言われても、、、。」
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