5/9
前へ
/20ページ
次へ
昼食が遅かったこともあって、二人とも特別何かを食べたい気分にならなかった。だから、近くのコンビニでつまみとお酒を買い込み、部屋で酒盛りをすることになった。酒が入った則子の荒れ方は、想像以上で、普段の愚痴が荒れ狂う波のように、有美の方へと押し寄せてくる。 ご主人に対しては、 「旦那はさ、何を喋っても『うん。』とか、『あ~、そうだね。』としか、言わないのよ。でも、口を開いたと思ったら、小言ばっかり、『お前の掃除の仕方のここが悪い。』とか、『お前がちゃんとしてないから、子供が反抗ばっかりする。』とか。お前はどうなんだよって、思うよね。お前の子供じゃないのかよってさ。掃除だって、気に入らないなら、お前がやれよって話でしょ。夜だって、残業だ、付き合いだって言っては、帰ってこないし、週末はゴルフに釣りでしょ。お前こそ、たまには家のことやれよ、って言いたくなるわよね。」 息子に対しては、 「克也は最近、部活辞めちゃってさ。三年生が引退してくれて、これからって時でしょ。小学生の時から、バスケットやってるのにさ、なんなのよ、もう。そのせいか、すっごく家でイライラして当たってくるのよ。口を開けば、『うるせぇな』よ。『ばばぁ』だってさ。あんたがちゃんとやってくれたら、私だって口出ししないのよ。」 娘に対しては、 「とにかく憎たらしくて仕方がないのよ。とにかく言い方が気に食わないのよね。大人ぶった言葉ばっかり使ってさ、いちいち食事についても文句つけてくるのよ。誰に似たのかしら、やっぱり旦那よね。」と、家族への不満が後を経たず続き、更にその悪口は、親戚にまで及んでいった。その間中、有美は相槌を打つ事しか出来なかった。 そして、彼女の最終的な結論はというと、「やっぱ、一時の気の迷いで結婚なんかしちゃダメよ。だから、有美は正解よ。」と、言うことらしい。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加