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俺のよく知っている森先輩という人は、自分の仕出かしたことを決して詫びたりしない人だ。
そんな人が自殺をするなんて……。
そう、俺には納得いくはずがなかったんだ。
だけどあの人が死んだことで、心のどこかでホッとするもう1人の自分がいた。
俺が見逃せばすむこと。
それでこの子も幸せになれる。
森先輩に傷つけられてきた女の子みんなが報われるんだ。
でも真面目な俺は、それが出来ない。
「なぁ麻衣ちゃん。その睡眠薬……本当にキミが飲んでいたのか?」
俺は自分の考えをまとめると、さっきから何も喋らなくなった彼女へ疑問になったことをぶつけてみた。
その瞬間、俺は見逃さなかった。
麻衣ちゃんの片方の眉がピクリと動いたのを……。
だけどすぐ我を取り戻した彼女は……そのまま気分が悪そうにベッドに横になる。
ついでに布団も大きく被ったので、その表情を読み取ることが出来なくなった。
「麻衣ちゃんっ!」
「木綿さんは、さっきから何が言いたいんですかぁ!!」
俺が少し声を荒げて叫ぶと、布団の中曇ったその声で、麻衣ちゃんが叫び返してきた。
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