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1年前のクリスマス……
考えたらあの日が人生の中で、1番幸せだったな。
首に巻いたマフラーが、パタパタと揺れながら冬を感じている。
行き交う人々が、冬の寒さと裏腹に何故か温かい笑顔を絶やさない。
俺の心は、永遠に冬だろう……。
「っと、いけない」
そういえば、俺はこの日。
目的の場所の前で、久しぶりに理香と待ち合わせをしていた。
俺が無理やり呼び出した。
本当は俺の顔なんか見たくないはずだけど、理香にも知ってもらいたかったから。
――――――……
それから車を飛ばして、20分程でやって来た目的の場所。
年明けにも関わらず、人で溢れ返っていた。
その場所で変わらずの笑顔を目にして、何だか頬が緩んでしまう。
「理ー香!」
「あ、木綿先輩……」
理香は俺と一緒にいた頃よりずっと幸せそうで、妬けちゃいそうな程だった。
ピンク色に染まった頬に、思わずキスしたくなる。
だけどもう、そんなこと出来はしない。
「寒かっただろう? 中で待ってれば良かったのに、」
カサカサと揺れる、この病院のシンボルともいえる大木の前。
彼女は冬の景色を目にしながら立っていた。
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