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俺の言葉に軽く小首を傾げていた理香は、自分の中でとりあえず納得したのか、そこから先は何も聞かずただ俺に従う。
理香と俺のこの微妙な距離感に、緊張していたのは俺だけだろう……。
―――――……
暫くして着いたある病室の前。
ここを訪れるのは数日振りのことだった。
その時は、平静を装ったこの俺を人は “悪魔” と呼ぶだろうか……。
だけど真実を手に入れるまでは、真実の確証が取れるまでは、このことをあの子だけには悟られてはならなかったんだ。
「理香は、ここに居てくれ」
病室のドアを開ける前に1度振り返って俺がそう言うと、理香はまた小首を傾げた。
でも今度は、言いたいことがあるのかその口を薄く開いた。
「ここで待ってて、どうするんですか?」
「俺と麻衣ちゃんの会話を聞いていてくれ」
「それってっ!」
俺の言葉に “動揺” の2文字を顔全体に表して理香の目が大きく見開く。
理香の言わんとすることは、手に取るように分かるさ。
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