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病室に入ると麻衣ちゃんは、点滴中だった。
目線は窓の外の景色。
空から枯れ葉が舞い散っていた。
今日は天気がいい。
外は寒いのに、病室の中は意外と暖かい。
それに穏やかな気温だ。
「……木綿さん?」
「お、麻衣ちゃんは背中に目があるのか?」
いきなり言い当てられてギクリとしたものの、俺は普通に交わした。
この場合すぐ本題に触れるのではなく、世間話から入るのも手だろう。
「うん、足音で分かるようになったんだぁ。偉いでしょ?」
と言いながら、目線はまだ窓の外へ向けられている。
きっと麻衣ちゃんは、いつも彼の足音を探しているうちに、違う人の足音も覚えてしまったのだろう。
……やはり、異常な程のブラコンか。
そんなに彼が好きか?
本来の自分を捨ててまで、キミが手に入れたいものとは何だ?
「ちゃんと、食ってるか?」
「うん、一応……」
……今気がついた。
この前見舞いに来た時より、明らかに細くなっている手首。
でも最近切った傷は見当たらないから、リスカをする回数は減っているのだろう。
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