十一

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「そうしたら、明日、ご家族が帰られた時、ご主人様だけに、胸のうちを明かしてみてください。」 「主人にだけですか。」 「はい。離婚の問題は、夫婦の問題ですから。」 「ご主人にだけ、謝ってください。そして、『三ヶ月後に、きちんと判を押すから、最後に良い思い出になる努力するから、三ヶ月だけ、待ってくれないか。』と、言ってみてください。ご主人がそこで、もっと早く、と言われても、この三ヶ月の期間だけは、短くならないように努力してください。それは、あなたにとってもご主人にとっても、大事な期間です。」 「分かりました。」と、則子は静かな口調で言った。そして付け加えるように「他に私がやる事はありますか。」と、陽子に尋ねる。 「本当に三ヶ月で別れ別れになるという事を意識して、大切にこの時間を過ごしてみてください。だから、離婚してからの事は、一切しないでください。」 「仕事とか、家とか探さないって事ですか?」 「もちろんです。」 「どうしてですか?、後三ヶ月もしたら、私一人で生きていかなくてはいけないんですよ。そんな、何も用意しないで、切羽つまった状況になんて、なりたくないです。」 「もし、この三ヶ月で慰謝料が突然もらえるようになったらどうしますか?」 「あぁ、働かないですね。」則子は、にんまり笑ってみせた。 「だったら、探す必要ないですよね。」 「確かに。」 「それから、もし、出来ることなら、日記をつけてみてください。」 「はい。」則子がにんまりと同意した所で、一回目のカウンセリングは終了した。
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