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「違うよ、則子。」 「何が、違うの?」 「私は、則子に幸せを理解してほしいと思ったから、ここに連れてきたんだ。」 「幸せ?」 「だって、則子、車の中で言ったじゃない。『幸せになりたい。』って。」 「それは確かに言ったかもしれないけど、私には、許す相手も、許す事柄もないわ。みんなは許したから、幸せになったんでしょ?、私には許す事も許す相手だっていないんだから、ここに来たって、幸せなんかになれないわ。」 少し言い合いになり始めている有美と則子の間に入り、陽子は「口を挟んですいません。」と一言行った上で、則子に向かって質問をした。 「あの、則子さんにとって、『幸せ』って何ですか。」 「幸せ?、そんな事突然言われても、分かる訳ないでしょ。」 「じゃぁ、例えば、お金がいっぱいあるとか、もしくは、家庭円満だったりとか、もしくは、趣味に没頭している自分とか。」 「それは、そりゃ、全部そうだったら、いいなぁって事よ。でも、今の私には無理よね。例え、『自分から今の家庭をやり直したい。』って言ったところで、それは全て後の祭りだわ。」 「そんな事ないと思いますよ、私。」 そう冷静に言った陽子の一言で、則子の血相は一瞬にして変わった。 「私の家の事情とか知らないあんたに、何が分かるよ。」 それはアドレナリンが全快になってる、逆鱗の一言だった。 「すいません、確かに私は則子さんの家庭の状況は、さっぱり分かりません。だけれども、これまで四年間やってきた経験からすると、全ては心一つで切り替わるって、言う事、私、それが事実として言えるんです。」 「だとしても、私、あなたみたいな若い女のお世話になんてなりたくないわ。」 「則子、ちょっと、陽子ちゃんに、そんな言い方しないでよ。」 喧嘩上等の雰囲気で陽子を睨む則子を制しようと、有美は間に入ろうとする。
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