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「でも、会えなくなるからと言って、具体的にどうしたらいいのか、分からないわ。」と、その胸の内を明かした。
「そしたら、どうでしょう、これから三ヶ月間、一週間に一度くらいのペースで、ここに通えませんか?具体的に、その時則子さんがやった方がいい事を私お伝えしますから。」
「一週間に一回もここに通うの。」
「はい、そこで、その間に湧いてきた感情を整理しましょう。」
堂々としている陽子の事が、今の則子には、さっぱり分からなかった。でも、今の自分に頼れるのは、彼女しかいないと思えてきた。だから、則子はこくりと頷いた。
「もし、お時間の都合が合うようだったら、最初の一回目は明日にしませんか。午前中なら、空いてるから。」
何か自分の思惑とは別に、どんどん事だけが進んでいるように則子は思えたが、何故か自分も「はい、明後日まで、家族は帰ってきませんから、明日だったら、大丈夫です。」と、受け答えしている事に驚いていた。
「丁度良いタイミングですね。それでは、明日の十時にこちらでお待ちしていますから。」
約束を取り交わすと、有美と則子は、その場を後にした。そして、所沢に戻る車内では、またいつもの則子の悪口が始まっていた。
「実際、どう思う?、本当なの?」
「本当っていうか、今日、沢山変わった人来てたでしょ?」
「確かに、明智蜜香が来てたのは驚いたわ。でもあのさ、西園寺きららって子?、あの子自分の事アイドルとか言っちゃって、イタくない?、あんなに太ってて、あの子もう、いい歳でしょ?、全然可愛くないし。」
「則子は、前を知らないからよ。昔のきららちゃん見たら、驚くよ。すごい綺麗になったよ。それにこれから、もっともっと綺麗になって、本当のアイドルになってく気がするわ。」
「有美、そんな風に思っちゃうの?」
「思っちゃうわね。もし、昔の写真を私が持っていたら、見せてあげたいくらいだわ。」
「そうなんだぁ、あれでも変わったんだね。」
「大変わりよ。だって、私、最初きららちゃんって気がつけなかったくらいなんだから。」
「へぇ~、そんなに変わったんだね。本当に変わるんだ。そしたら、私も、幸せになれるのかなぁ。」
「なろうと思った瞬間から、人は変われるんだよ。大丈夫よ、則子もきっと。」
「そうかなぁ。」
そして、則子はようやく幸せへの一歩を踏み出した。
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