始まりはいつも突然に

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静かな部屋、簡素なベッドと作業用のデスクのみが置かれた質素な空間で羽ペンが書類の上で軽やかにダンスを踊る音だけが絶えずリズミカルに紡がれる ここは神界、一応神様が集う世界だ 「ふぅ…天照、すまないがこの書類をジジイに、こっちの書類は各部の奴等に届けて貰えるか」 「わかった、後は私が処理しておく お前はゆっくり休むといい…ここ数億年、睡眠はおろかろくな休憩も採っていないだろう」 「すまん…それじゃ、お言葉に甘えさせて貰おうかな」 羊皮紙の束をトントンと叩いて整えながら優しい笑みを浮かべる和服に羽衣を纏った美女…天照の提案に微笑み返しながら羽ペンを置くと、脇に置いてあったコーヒーを煽り、大きく伸びをする 神様と言えば聞こえは良いが、その実態は社畜も裸足で逃げ出す超ブラック企業だ…正直、神様に睡眠は不要という点を除いても、数百億年に一時間でも睡眠が摂れれば御の字という極悪労働環境の中で仕事をするのは鬼畜だと思う そんな機関のトップ2である俺に休憩時間など用意される筈も無いワケで…むしろ現地作業に赴くのが気分転換というワーカホリックぶりだ 「そうだ、天照…その書類を配り終えたら、一杯どうだい」 「乗った」 右手で小さい輪を作り、クイッと傾ける仕草をすると、天照もニヤリと笑い返し、入口のドアノブに手を掛けて――― ―バターン!! 「あ」 「白夜タソ~!! 遊びに来たぞ~い!!」 …引こうとした瞬間、勢いよくドアを開けて入って来たジジイのおかげで、鉄製のドアと強烈なキスを交わした
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